FINAL FANTASY VII BEFORE CRISIS

◎ レジェンド特別章

長く続いていたウータイとの
戦争は終わり

人々が平和に
喜びを感じていたとき―

タークス主任
ヴェルドだけは
次なる脅威を予見していた

彼は
それを乗り切るべく

ある男を
タークスへ呼び戻す
決意を固めていた

[υ]-εγλ 0001/1/10

ヴェルド:
 入れ

ツォン:
 お呼びですか?

ヴェルド:
 お前に話がある
 コスタ・デル・ソルにいる
 あの男を呼び戻してほしい

ツォン:
 (あの男を?)
 (たしか・・・)
 (2年前の事件から謹慎中のはずだ)
 しかし・・・
 彼の謹慎はとかれたのですか?

ヴェルド:
 大戦は終結したが・・・
 反神羅組織の動きは活発になっていくだろう
 彼の力は必ず必要になる

ツォン:
 はい

ヴェルド:
 2年前の事件を気にしているのか?

ツォン:
 いえ・・・
 そうではありませんが

ヴェルド:
 大丈夫だ
 復帰した後のことは俺に任せろ
 上は俺が説得する

ツォン:
 わかりました

ヴェルド:
 頼んだぞ

ツォン:
 はい

--コスタ・デル・ソル--

ツォン:
 (滞在先にはいなかった)
 (どこにいるんだ?)

ツォン:
 この男を
 見かけなかったか?

ジュリ:
 ヤだ、彼じゃない!
 ついに何かしでかしたの?

ローズ:
 この前はジェシー
 昨日はキャサリン
 みんなに優しいからやんなっちゃう

ジュリ:
 あんた、彼の友達?

ツォン:
 友達ではない

ジュリ:
 ふ~ん

ローズ:
 彼ならビーチじゃない?

ツォン:
 わかった
 ありがとう

ローズ:
 彼に会ったら言っておいてね!
 次は、あたしとデートしてって

ジュリ:
 待ってよ
 次は、あたしなの!

ツォン:
 ・・・・・
 楽しんでいるみたいだな・・・

レジェンド男:
 ツォン!
 敵に近づくときは足音も気配も消せ
 そう教えたハズだ

ツォン:
 (・・・なに!?)
 (足音も気配も消していたハズだが・・・)
 耳がいいのは相変わらずだな

レジェンド男:
 [μ]-εγλ1999年の任務以来だな
 久しぶりじゃねぇか
 お前も俺みたいに処分をくらったのか?

ツォン:
 な・・・!
 もちろん違う

レジェンド男:
 ハハッ
 冗談だよ
 俺に用か?

ツォン:
 タークスへ復帰してほしい
 主任が
 あなたの力を必要としている

レジェンド男:
 おいおい
 見ろよ、この太陽
 ミッドガルじゃお目にかかれねぇ
 そして陽気な女たち!
 ときたら・・・
 帰りたいと思う男がいるか?

ツォン:
 ・・・・・・
 (戻ってくる気はないってことか)

レジェンド男:
 俺の話はどうでもいいだろ?
 それより、お前だ
 ちゃんと鍛えてるんだろうな
 お前が俺より強くなってたら戻ってもいい
 かかってこいよ

ツォン:
 (静かに話をしたかったが)
 (この人はすぐにコレだ)
 わかった
 お手合わせ願おう

レジェンド男:
 ツォン
 覚悟はいいか?

レジェンド男:
 本気でかかってこいよ
 お前の実力はこんなもんか?

ツォン:
 くっ・・・!
 (前よりも強くなっている)

レジェンド男:
 ツォン
 だいぶ腕をあげたじゃねぇか
 ただ・・・
 銃を撃った後に隙ができるクセ
 まだ直ってないな
 戦場ではそれが命取りだ
 俺が敵だったら見逃さないぞ?

ツォン:
 悔しいが・・・
 あなたには適わないな

レジェンド男:
 ハハッ!
 初対面の俺に
 銃を向けた奴がよく言うぜ

ツォン:
 (2年前のあの日か・・・)

大戦のさなか―

伝説となった
ひとりの男がいた

最強の
特殊工作員として

あらゆる戦場を
股にかけた―

彼の本当の名を
知る者はいない

【戦場の死神】
兵士たちに
そう呼ばれ
恐れられた男が

いま
タークス本部に
降り立つ

[μ]-εγλ 1999/11/10

ヴェルド:
 入れ

ヴェルド:
 新しいメンバーを紹介しよう
 ちょうど今彼に任務の話をしていたところだ

ツォン:
 !!
 この男は!!
 なぜココにいるのですか!?
 主任!
 あの任務を忘れたのですか!?
 私は・・・
 認められません!

ヴェルド:
 ツォン!
 銃をしまえ
 俺から説明する

レジェンド男:
 お前・・・

ツォン:
 !?

レジェンド男:
 もう銃をしまうのか?
 俺を殺す気なら
 息の根を止めるまでしまうんじゃねぇよ
 オドシで銃を抜くような
 安い男じゃねぇんだろ?

ツォン:
 なに!?

ヴェルド:
 ツォン!
 3年前の任務のことは俺も忘れてはいない
 お前の気持ちもわかるが・・・
 ここは抑えろ

ヴェルド:
 彼は俺が勧誘してきた

ツォン:
 主任が、ですか?

ヴェルド:
 そうだ
 経歴はともかく・・・
 彼の実力はお前も知っているとおりだ

ツォン:
 はい
 (彼は戦場の死神と呼ばれた男)
 (反神羅組織に雇われていたときは)
 (ソルジャーですら苦戦を強いられていたと聞く・・・)
 (その能力を疑う余地はない)
 (しかし・・・)

ヴェルド:
 なぜ連れてきた?
 という顔だな

ツォン:
 ・・・・・・

ヴェルド:
 お前も気づいているだろう
 この大戦では消しきれないであろう火種がある

ツォン:
 火種、ですか?

ヴェルド:
 そうだ
 反神羅組織の動きが活発になってきた

ツォン:
 (やはり・・・)

ヴェルド:
 戦争で体力が落ちている今こそ
 強い力が必要なのだ
 彼の存在は神羅とタークスにとって
 かけがえのない戦力となる

ツォン:
 ・・・はい
 (主任が言っていることは正しい)
 (あとは感情の問題・・・)
 (今は・・・主任を信じよう)

ツォン:
 ・・・・・・
 あなたの名は?

レジェンド男:
 俺か?

ツォン:
 そうだ

レジェンド男:
 レジェンド男と呼んでくれ

ツォン:
 わかった

レジェンド男:
 ヴェルドのおっさん
 俺、もう行くわ
 話が長いのは苦手でね

ヴェルド:
 任務の詳しい説明は必要ないか?

レジェンド男:
 必要ない

ヴェルド:
 よし
 では、任せたぞ

ヴェルド:
 ツォン
 彼のサポートを頼む
 任務の詳しい内容は携帯へ送っておこう

ツォン:
 わかりました
 確認してから現場へ向かいます

ヴェルド:
 頼んだぞ

レジェンド男:
 さて・・・
 (今日はどっちの爆弾で戦うかな)
 (俺の手元には)
 (時限式の爆弾とリモコン式の爆弾の2種類がある)
 (時限式の爆弾は地面に置くとタイマーが作動)
 (一定時間後に爆破する仕組みだ)
 (同時に2個まで置けて連鎖爆破もできる)
 (リモコン式は手元のリモコンで起爆する)
 (15秒以内に決定キーを押せば派手に吹き飛ぶ)
 (今日の気分は・・・)
 今日はリモコン式の爆弾にしとくか

レジェンド男:
 ここだな

レジェンド男:
 (・・・よし)
 (風と天候は問題ない)

ツォン:
 私だ

レジェンド男:
 用か?

ツォン:
 任務の最終確認をする

レジェンド男:
 誘拐されたおっさんの救出と
 誘拐犯たちの完全排除、だろ?

ツォン:
 おっさん、ではない
 ライナー氏だ

レジェンド男:
 武器商人なんだってな

ツォン:
 そうだ
 神羅とは裏のつながりというわけだ
 犯人が占拠している
 この軍事工場は彼の会社のものだ

レジェンド男:
 それより犯人からの要求は?

ツォン:
 さっき届いた
 1つめは活動資金の確保

レジェンド男:
 金をくれ、と

ツォン:
 2つめは
 コレル・プリズンに
 囚われている政治犯の解放

レジェンド男:
 仲間を返せ、と

ツォン:
 神羅が要求に応じない場合は
 軍事工場の機密を持ち出して
 世界中にバラまく
 と言っている

レジェンド男:
 ・・・ったく
 反乱者ってやつは
 どいつも、こいつも強欲だな

ツォン:
 経験があるのか?

レジェンド男:
 さあな
 敵の数は?

ツォン:
 およそ、40

レジェンド男:
 そいつは怖いねぇ

ツォン:
 どこから攻める?

レジェンド男:
 正面から行く

ツォン:
 本気か!?

レジェンド男:
 手は打った

ツォン:
 (こんな短い間に?)
 私は
 そこから遠くない場所で待機している
 問題が発生したら駆けつけよう

レジェンド男:
 なぁ、ツォンさんよ
 1つ賭けをしないか?
 何分で任務を終わらせられるか?
 俺は10分に賭ける
 お前は?

ツォン:
 賭け事はしない主義だ

レジェンド男:
 ノリが悪りぃな
 お前、モテないだろ?

ツォン:
 その質問に答える必要はない
 ところで・・・
 そんなに早く任務を終わらせられるのか?

レジェンド男:
 もちろん

ツォン:
 そうか
 賭け事はしないが
 プロとしての仕事を見せてほしい
 10分以内に任務が終わると信じている
 以上だ

レジェンド男:
 ・・・チッ!
 リズムが狂うぜ

傭兵:
 タークス!!

レジェンド男:
 (最初のアイサツといくか・・・)

レジェンド男:
 ≪ カチッ ≫

傭兵:
 向こうに煙が!

傭兵:
 敵か!?

傭兵:
 油断するな!

レジェンド男:
 爆音を追えば

傭兵:
 ウワーッ!!

レジェンド男:
 そこも地獄だ

ツォン:
 私だ

レジェンド男:
 ああ

ツォン:
 成功したな
 次は、どうする?

レジェンド男:
 人質は何階だ?

ツォン:
 おそらく2階だ

レジェンド男:
 ここを支えている柱は5箇所・・・
 そうだったな?

ツォン:
 間違いない

レジェンド男:
 よし
 柱に爆弾を仕掛けていく

ツォン:
 !?
 5箇所もあるぞ?
 それに敵もいる
 間に合うのか?

レジェンド男:
 間に合わせるのさ
 じゃあな

傭兵:
 お前は・・・!!

レジェンド男:
 俺を知っているのか?

傭兵:
 [μ]-εγλ1995年の紛争は
 お前のせいで・・・!

レジェンド男:
 誤るのは失礼だな
 お前にも、仲間にも
 その代わり・・・
 本気でいくぜ

レジェンド男:
 (ここにコイツを仕掛けるか)

レジェンド男:
 よし、次だ

傭兵:
 !!
 神羅の犬とは落ちぶれたな

レジェンド男:
 俺は何も変わっていない
 違う戦場を生きているだけだ

傭兵:
 !?
 本気か?
 あんたがタークス?

レジェンド男:
 やれやれ
 古い顔によく会う日だ

レジェンド男:
 (ここにコイツを仕掛けるか)

ツォン:
 私だ

レジェンド男:
 ・・・・・・

ツォン:
 爆弾の設置が終わったようだな

レジェンド男:
 ・・・・・・
 ハァ
 そろそろ女の子に
 代わってくれないか?

ツォン:
 私で我慢してくれ

レジェンド男:
 今日はツイてねぇな
 (渋い男ばっかりじゃねぇか・・・)

ツォン:
 次はどうする?

レジェンド男:
 ここからは一気に攻める

ツォン:
 いいか
 被害は最小限に・・・!

レジェンド男:
 あわてんなよ
 せっかちも女にモテないぜ?

ツォン:
 幸運を祈る

レジェンド男:
 (切りやがった)
 ・・・カタブツめ

レジェンド男:
 よし
 一気にクライマックスだ

傭兵:
 いたぞ!

傭兵:
 捕まえろ!

傭兵:
 ウッ!

傭兵:
 コッチだ!

傭兵:
 爆弾を持ってる!

傭兵:
 ワーッ

傭兵:
 奥へ移動してる!

傭兵:
 止めろ!

傭兵:
 ウワーッ!!

レジェンド男:
 これでも食らって
 大人しくしとけ!

レック:
 !?

レック:
 敵襲か?

レジェンド男:
 おっさん!
 助けに来たぞ
 ・・・・・・

ライナー:
 ング・・・グ・・・グッ!

レジェンド男:
 (さるぐつわも手足の拘束も)
 (素人の仕事じゃねぇな・・・)
 ・・・おっさん
 しばらく我慢してくれ

レック:
 あの独特の爆発音
 やっぱりあんただったのか・・・

レジェンド男:
 久しぶりだな

レック:
 ・・・・・・
 戦場では死神と恐れられた男が・・・
 なぜ神羅にいるんだ!?

レジェンド男:
 神羅に従っているわけじゃねぇ
 力を貸しているだけだ

レック:
 今回ばっかりは
 さすがのあんたも逃げられないぞ

レジェンド男:
 「逃げる」だと?
 女を泣かせるな
 勝負を投げ出すな
 この2つが俺の信条でね

レック:
 初耳だ

レジェンド男:
 お前たちこそ
 逃げなくていいのか?

レック:
 昔の俺とは違う

レジェンド男:
 そいつは残念

レジェンド男:
 ≪ カチッ ≫

傭兵:
 !!

レック:
 !!

レジェンド男:
 さてと・・・
 これで1階の傭兵は全滅
 2階のザコも片づいたぜ
 [μ]-εγλ1995年の作戦以来だな

レック:
 嬉しいことに
 腕は落ちていないらしい

レジェンド男:
 当然、だろ?
 爆弾は俺のリズムだ

レック:
 なんだと?

レジェンド男:
 生きている証さ
 戦場でしか生きられない
 お前ならわかるだろ

レック:
 ああ
 怖いほどわかるぜ

レジェンド男:
 昔のよしみだ
 本気でいくぞ

レジェンド男:
 そんな腕で
 よく生き残れたな

レック:
 ・・・お、まえ・・・
 そいつが誰か・・・
 わからな・・いのか?

レジェンド男:
 ・・・誰か?

レック:
 [μ]-εγλ1997年の話・・・
 噂で・・・聞いたぜ

レジェンド男:
 俺が参加した作戦の話を・・・?

レック:
 真相・・・は・・・
 俺・・・も・・・しらな・・かった・・・がな・・・
 かんが・・・える時間をや・・・る
 永遠に・・・な

レジェンド男:
 やれやれ
 交渉に失敗したら
 敵も味方も片付けるのかよ
 相変わらず
 やる事がセコいな
 ([μ]-εγλ1997年の事件か・・・)
 (思い出すな・・・)
 おっさん、帰るぞ

ライナー:
 ん・・・!ぐ・・・!

レジェンド男:
 今はずしてやる

ライナー:
 ハァハァハァ
 き、きさ・・・・ま!
 いつまで待たせるんだ!

レジェンド男:
 ・・・・・!?
 (この声・・・!)
 (まさか・・・)
 (コイツは・・・!)
 ・・・・・・
 (そうか・・・)
 (そういう事かよ)
 (顔と名前は簡単に変えられる)
 (声までは変えなかったのか)

ライナー:
 モタモタするな!
 早く安全な道を教えろ!

レジェンド男:
 ちょっと待て

ツォン:
 私だ!
 ライナー氏は無事か?
 急いで脱出しろ!
 崩れにくい方へ案内・・・

レジェンド男:
 ツォン
 ヴェルドのおっさんに
 [μ]-εγλ1997年のカタをつける
 と伝えてくれ
 じゃあな

ツォン:
 おい!

ライナー:
 い、今のは
 救援の電話じゃないのか!?
 か、勝手に切りやがって!

レジェンド男:
 ・・・・・
 なあ、おっさん

ライナー:
 なんだ!?
 話をしてるヒマなどないだろ!

レジェンド男:
 ・・・・・・
 [μ]-εγλ1997年を覚えているか?

ライナー:
 ?

レジェンド男:
 [μ]-εγλ1997年の事件だ

ライナー:
 何の話だ?
 お前は
 まいにち自分の手足を
 どう動かしたのか
 覚えているのか!?
 金にならん話は覚えとらん!

レジェンド男:
 ・・・・・
 そうか

ライナー:
 ヒィッ!!
 ま、また崩れたぞ!
 早くしろ!!

レジェンド男:
 おっさん
 1つ賭けをしないか?
 おっさんが、ここから無事に出れたら・・・
 無くした記憶を埋めてやろう

ライナー:
 賭けだと!?
 おまえ正気か!?

レジェンド男:
 自分の命ぐらい自分で守ってみろよ
 あの時の俺たちがそうしたようにな

ライナー:
 キサマッ!
 タークスのくせに
 任務を放棄するのか!?

レジェンド男:
 タークスなんて知らねぇよ
 俺は、俺だ

ライナー:
 待て!!
 あの野郎・・・!

ヴェルド:
 入れ

ツォン:
 主任!!
 彼の処分はどうなりましたか!?

ヴェルド:
 先ほど報告があった
 コスタ・デル・ソルでの長期謹慎が命ぜられた

ツォン:
 (バカな!)
 (タークスとして任務を放棄し)
 (その上神羅の要人を見殺しにしたのに)
 (南国で謹慎だと?)

ヴェルド:
 上が恐れていたのは
 神羅の機密がライナー氏や工場から
 外部へもれることだ
 その全てが消えた今
 神羅の安全は確保された

ツォン:
 ・・・・・・
 つまり、それらよりも
 彼を失う損害の方が大きいと・・・
 そういう判断ですね?

ヴェルド:
 そうだ

ツォン:
 (そして)
 (名ばかりの処分が下されたというわけか・・・)

ツォン:
 (しかし・・・)
 (わからない事がある)

ヴェルド:
 何か言いたげだな

ツォン:
 一緒に仕事をしてわかりました
 彼の工作能力は超一流です
 あれほどの力をもってすれば
 任務は間違いなく成功できたはずです
 その彼がなぜ任務を放棄したのか・・・
 私にはわからないのです

ヴェルド:
 ・・・・・・
 彼が、最後の電話で言っていた
 [μ]-εγλ1997年の事件のことは?

ツォン:
 は、はい・・・
 確か・・・
 反神羅組織が魔晄炉を占拠し神羅を脅迫した・・・
 あの事件ですね?

ヴェルド:
 そうだ
 その反神羅組織へ武器を提供していたのがライナー氏だ

ツォン:
 !?
 (ライナー氏が?知らなかった・・・)
 神羅と付き合う前は
 反神羅組織と取引していたのですね

ヴェルド:
 そのようだ
 [μ]-εγλ1997年までは
 反神羅組織と
 親密な関係にあったらしい
 結末は知っているな?

ツォン:
 はい
 反神羅組織の作戦は、失敗
 関係者で生存したのは・・・
 2名でしたね

ヴェルド:
 そうだ
 そのうち1人はライナー氏だろう

ツォン:
 !?
 もう1人の生存者は
 まさか・・・?

ヴェルド:
 そう
 【戦場の死神】だ

ツォン:
 ・・・・・・
 (事件後ライナー氏は過去を消し去り)
 (神羅と取引を始めた・・・)
 (そうか・・・)

ヴェルド:
 あの日
 俺は現場にいた
 事件直後
 安全を確かめるため魔晄炉へ向かった
 そこに彼がいた
 【戦場の死神】と
 恐れられた男だ
 俺は身構えた
 だが・・・
 彼は武器を捨てある物を持っていた

ツォン:
 ある物・・・?

ヴェルド:
 ああ
 彼は左手に赤い靴を1足だけ持っていた
 そのとき、彼が静かに口を開いた
 『あいつには・・・家族がいない』
 『あいつのために泣いてくれる家族がいないんだ』
 『今日ぐらいは』
 『あいつの死を哀しんでやってくれ・・・』

ツォン:
 ・・・・・・

ヴェルド:
 彼は多くを語らない
 ここからは俺の想像だ
 ライナー氏の裏切りによって仲間が死んだ
 仲が良かった孤児の少女も犠牲になった
 彼だけはその強さゆえに
 ただひとり生き延びてしまった

ツォン:
 ・・・・・・

ヴェルド:
 ツォン
 今回の任務・・・
 お前が彼だったらどうした?

ツォン:
 ・・・・・・
 私だったら・・・

任務を放棄した
レジェンド男は

コスタ・デル・ソルで
謹慎となった

ヴェルドは
彼を呼び戻すタイミングを
うかがっていた―

レジェンド男:
 ツォン
 お前なら・・・
 お前ならどうしたんだ?

ツォン:
 わからない
 わからないが
 しかし・・・
 裏切られて殺された仲間
 死ななくても良かった少女が・・・
 私にとって大切な人だったのなら・・・
 私も同じ事をしたかもしれない

レジェンド男:
 らしくねぇな
 
ツォン:
 タークスへ戻ってこないか?
 あなたが必要なんだ

レジェンド男:
 ・ ・・・・・
 ライナーと組んでいた神羅に対して
 特別な感情を持ってはいない
 そんな世界に一喜一憂するほど若くねぇしな
 ただな・・・
 覚悟が定まらねぇんだよ

ツォン:
 覚悟?

レジェンド男:
 おっさんに言えばわかるさ

ツォン:
 わかった
 伝えよう

レジェンド男:
 本音を言うとな
 まだ
 遊び足りねぇからだ
 タークスなんて面倒くさいとこ帰る気にならん
 そして何より・・・
 明日もデートでね

ツォン:
 (・・・本音は違うんだろ?)
 あなたの意志はわかった
 ただ・・・
 これだけは忘れないでくれ
 主任はあなたの帰りを待っている
 私はまた一緒に戦いたいと思っている
 以上だ

[υ]-εγλ 0002/2/1

ヴェルド:
 俺だ

レジェンド男:
 おっさん!
 久しぶりだな

ヴェルド:
 ああ

レジェンド男:
 どうした?
 元気ねぇな

ヴェルド:
 タークスの指揮権を失った

レジェンド男:
 ハハッ!
 そりゃ
 おもしろくなってきたじゃねぇか

ヴェルド:
 お前に頼みがある

レジェンド男:
 おっさん
 この回線は神羅に傍受されて
 いないだろうな?

ヴェルド:
 もちろんだ
 この通信は暗号化されている
 安心しろ

レジェンド男:
 よし
 話してくれ

ヴェルド:
 タークスへ復帰してくれないか?

レジェンド男:
 ・ ・・・・・
 俺はあの魔晄炉の前で
 おっさんに言ったよな
 何も生み出さない戦いをするのは
 もうゴメンだ、と

ヴェルド:
 そうだったな
 神羅は長引く大戦を
 終結させようとしていた
 だから俺はお前をタークスへ誘ったのだ

レジェンド男:
 戦争は終わった
 俺にはもう戻る理由がない

ヴェルド:
 戦争はまだ終わっていない

レジェンド男:
 ん?

ヴェルド:
 アバランチという
 半神羅組織が本格的に動きだした
 奴らは今もジュノンで破壊活動中だ

レジェンド男:
 そいつは事件だな

ヴェルド:
 時代はふたたび動き出した
 タークスにも神羅にも
 お前の力が必要だ

レジェンド男:
 ・ ・・・・・
 (おっさん・・・)
 そこまで言われちゃカッコつかねぇな
 わかった

ヴェルド:
 頼んだぞ

レジェンド男:
 状況は?

ヴェルド:
 ハイデッカーの指揮で
 現場が混乱している
 ジュノン市民の安全確保も危うい

レジェンド男:
 指揮権は?

ヴェルド:
 俺の命を懸けてでも奪い返すつもりだ

レジェンド男:
 よし
 後は俺に任せろ

アバランチ兵:
 タークス!!

レジェンド男:
 よぉ、坊やたち
 急いでいるところ悪いんだが・・・
 ここから先へは通さないぜ
 かわいい後輩たちが困っているらしいんでな

アバランチ兵:
 !?
 コイツ、どこかで・・・

アバランチ兵:
 タイムロスは命取りだ
 やれ!!

レジェンド男:
 まだやんのか

アバランチ兵:
 コイツ・・・!
 (もしや、あの男か?)
 (なぜタークスに!?)
 かかれ!

レジェンド男:
 ったく・・・
 リズムが狂うぜ

レジェンド男:
 やれやれ
 おっさんの指揮権が戻るまで
 あと50人くらい片付けるか

エルフェ:
 !?
 (あの男はタークス・・・?)
 ひるむな、進め!

レノ:
 ん?
 (敵の様子がおかしいぞ、と)

ルード:
 (・・・敵の数が減ってきたか?)

ツォン:
 (何かあったのか?)
 (敵の統制がとれなくなってきている)
 (主任は必ず戻る・・・)
 (それまで私たちがジュノンを守らなければ)

レジェンド男

タークスたちは

ヴェルドの復帰を信じて
戦い続けた

その思いに応えるべく

タークスの
指揮権を取り戻した
ヴェルドは

ジュノンの混乱を
おさめることに
成功した

ヴェルド:
 危険な任務をよく乗り切った
 これからもよろしく頼む

ツォン:
 はっ

ヴェルド:
 もうひとつ話がある
 お前たちに紹介したい男がいるんだ
 入れ

ツォン:
 !!

ヴェルド:
 紹介しよう
 ジュノン港でお前たちが苦戦していたとき
 動けなかった私の代わりに戦ってもらった

ツォン:
 (やはり・・・)
 (途中から一気に敵の数が減ったのは)
 (この人の働きだったのか)

レジェンド男:
 おっさん
 無事で何よりだ

ヴェルド:
 まだ死ぬ時ではなかったようだ

レジェンド男:
 ツォン、お前は・・・
 簡単にくたばるような
 性格じゃねぇよな?

ツォン:
 ・ ・・・・・
 ほめ言葉と受け取っておく

ヴェルド:
 ツォンには
 タークスのリーダーを任せている
 これから任務の指示を
 受けることもあるだろう

レジェンド男:
 ほう
 出世したんだな
 ま、
 俺は新人ってワケだ
 よろしく頼むぜ

ツォン:
 (・・・新人!?)
 (間違ってはいないがずいぶんクセのある新人だな・・・)
 みんな
 この人のことは知っているだろう?
 謹慎していたレジェンド
 と、言ったほうがわかりやすいだろうか

レノ:
 (あれが噂のレジェンド・・・)
 (ホントに恐そうだな・・・)

ルード:
 (任務を放棄しても処分されなかった)
 (伝説の人だ)
 (怒ると手がつけられないぞ)
 (レノ・・・お前は特に用心しろよ)

ツォン:
 彼の腕は私が保証する
 タークス以前は死神と呼ばれて
 恐れられていた男だ

レノ:
 (よ…、用心するぞ、と)

ルード:
 (しかし・・・)
 (たいへんな人が帰ってきたな・・・)

ヴェルド:
 覚悟は定まったのか?

レジェンド男:
 俺に聞いてんのか
 おっさんに命を預けると決めた
 俺は…、タークスだ

【戦場の死神】
と恐れられ

【 レジェンド・タークス】
と呼ばれた男が

今、ここに復帰した

彼の過去を知る者は
その報に驚き
恐れたが―

彼が自らの過去を
振り返ることは

もう二度となかった

すべては

永遠に

戦場の闇に眠る

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