FINAL FANTASY VII BEFORE CRISIS
◎ レジェンド特別章
長く続いていたウータイとの
戦争は終わり
人々が平和に
喜びを感じていたとき―
タークス主任
ヴェルドだけは
次なる脅威を予見していた
彼は
それを乗り切るべく
ある男を
タークスへ呼び戻す
決意を固めていた
[υ]-εγλ 0001/1/10
ヴェルド:
入れ
ツォン:
お呼びですか?
ヴェルド:
お前に話がある
コスタ・デル・ソルにいる
あの男を呼び戻してほしい
ツォン:
(あの男を?)
(たしか・・・)
(2年前の事件から謹慎中のはずだ)
しかし・・・
彼の謹慎はとかれたのですか?
ヴェルド:
大戦は終結したが・・・
反神羅組織の動きは活発になっていくだろう
彼の力は必ず必要になる
ツォン:
はい
ヴェルド:
2年前の事件を気にしているのか?
ツォン:
いえ・・・
そうではありませんが
ヴェルド:
大丈夫だ
復帰した後のことは俺に任せろ
上は俺が説得する
ツォン:
わかりました
ヴェルド:
頼んだぞ
ツォン:
はい
--コスタ・デル・ソル--
ツォン:
(滞在先にはいなかった)
(どこにいるんだ?)
ツォン:
この男を
見かけなかったか?
ジュリ:
ヤだ、彼じゃない!
ついに何かしでかしたの?
ローズ:
この前はジェシー
昨日はキャサリン
みんなに優しいからやんなっちゃう
ジュリ:
あんた、彼の友達?
ツォン:
友達ではない
ジュリ:
ふ~ん
ローズ:
彼ならビーチじゃない?
ツォン:
わかった
ありがとう
ローズ:
彼に会ったら言っておいてね!
次は、あたしとデートしてって
ジュリ:
待ってよ
次は、あたしなの!
ツォン:
・・・・・
楽しんでいるみたいだな・・・
レジェンド男:
ツォン!
敵に近づくときは足音も気配も消せ
そう教えたハズだ
ツォン:
(・・・なに!?)
(足音も気配も消していたハズだが・・・)
耳がいいのは相変わらずだな
レジェンド男:
[μ]-εγλ1999年の任務以来だな
久しぶりじゃねぇか
お前も俺みたいに処分をくらったのか?
ツォン:
な・・・!
もちろん違う
レジェンド男:
ハハッ
冗談だよ
俺に用か?
ツォン:
タークスへ復帰してほしい
主任が
あなたの力を必要としている
レジェンド男:
おいおい
見ろよ、この太陽
ミッドガルじゃお目にかかれねぇ
そして陽気な女たち!
ときたら・・・
帰りたいと思う男がいるか?
ツォン:
・・・・・・
(戻ってくる気はないってことか)
レジェンド男:
俺の話はどうでもいいだろ?
それより、お前だ
ちゃんと鍛えてるんだろうな
お前が俺より強くなってたら戻ってもいい
かかってこいよ
ツォン:
(静かに話をしたかったが)
(この人はすぐにコレだ)
わかった
お手合わせ願おう
レジェンド男:
ツォン
覚悟はいいか?
レジェンド男:
本気でかかってこいよ
お前の実力はこんなもんか?
ツォン:
くっ・・・!
(前よりも強くなっている)
レジェンド男:
ツォン
だいぶ腕をあげたじゃねぇか
ただ・・・
銃を撃った後に隙ができるクセ
まだ直ってないな
戦場ではそれが命取りだ
俺が敵だったら見逃さないぞ?
ツォン:
悔しいが・・・
あなたには適わないな
レジェンド男:
ハハッ!
初対面の俺に
銃を向けた奴がよく言うぜ
ツォン:
(2年前のあの日か・・・)
大戦のさなか―
伝説となった
ひとりの男がいた
最強の
特殊工作員として
あらゆる戦場を
股にかけた―
彼の本当の名を
知る者はいない
【戦場の死神】
兵士たちに
そう呼ばれ
恐れられた男が
いま
タークス本部に
降り立つ
[μ]-εγλ 1999/11/10
ヴェルド:
入れ
ヴェルド:
新しいメンバーを紹介しよう
ちょうど今彼に任務の話をしていたところだ
ツォン:
!!
この男は!!
なぜココにいるのですか!?
主任!
あの任務を忘れたのですか!?
私は・・・
認められません!
ヴェルド:
ツォン!
銃をしまえ
俺から説明する
レジェンド男:
お前・・・
ツォン:
!?
レジェンド男:
もう銃をしまうのか?
俺を殺す気なら
息の根を止めるまでしまうんじゃねぇよ
オドシで銃を抜くような
安い男じゃねぇんだろ?
ツォン:
なに!?
ヴェルド:
ツォン!
3年前の任務のことは俺も忘れてはいない
お前の気持ちもわかるが・・・
ここは抑えろ
ヴェルド:
彼は俺が勧誘してきた
ツォン:
主任が、ですか?
ヴェルド:
そうだ
経歴はともかく・・・
彼の実力はお前も知っているとおりだ
ツォン:
はい
(彼は戦場の死神と呼ばれた男)
(反神羅組織に雇われていたときは)
(ソルジャーですら苦戦を強いられていたと聞く・・・)
(その能力を疑う余地はない)
(しかし・・・)
ヴェルド:
なぜ連れてきた?
という顔だな
ツォン:
・・・・・・
ヴェルド:
お前も気づいているだろう
この大戦では消しきれないであろう火種がある
ツォン:
火種、ですか?
ヴェルド:
そうだ
反神羅組織の動きが活発になってきた
ツォン:
(やはり・・・)
ヴェルド:
戦争で体力が落ちている今こそ
強い力が必要なのだ
彼の存在は神羅とタークスにとって
かけがえのない戦力となる
ツォン:
・・・はい
(主任が言っていることは正しい)
(あとは感情の問題・・・)
(今は・・・主任を信じよう)
ツォン:
・・・・・・
あなたの名は?
レジェンド男:
俺か?
ツォン:
そうだ
レジェンド男:
レジェンド男と呼んでくれ
ツォン:
わかった
レジェンド男:
ヴェルドのおっさん
俺、もう行くわ
話が長いのは苦手でね
ヴェルド:
任務の詳しい説明は必要ないか?
レジェンド男:
必要ない
ヴェルド:
よし
では、任せたぞ
ヴェルド:
ツォン
彼のサポートを頼む
任務の詳しい内容は携帯へ送っておこう
ツォン:
わかりました
確認してから現場へ向かいます
ヴェルド:
頼んだぞ
レジェンド男:
さて・・・
(今日はどっちの爆弾で戦うかな)
(俺の手元には)
(時限式の爆弾とリモコン式の爆弾の2種類がある)
(時限式の爆弾は地面に置くとタイマーが作動)
(一定時間後に爆破する仕組みだ)
(同時に2個まで置けて連鎖爆破もできる)
(リモコン式は手元のリモコンで起爆する)
(15秒以内に決定キーを押せば派手に吹き飛ぶ)
(今日の気分は・・・)
今日はリモコン式の爆弾にしとくか
レジェンド男:
ここだな
レジェンド男:
(・・・よし)
(風と天候は問題ない)
ツォン:
私だ
レジェンド男:
用か?
ツォン:
任務の最終確認をする
レジェンド男:
誘拐されたおっさんの救出と
誘拐犯たちの完全排除、だろ?
ツォン:
おっさん、ではない
ライナー氏だ
レジェンド男:
武器商人なんだってな
ツォン:
そうだ
神羅とは裏のつながりというわけだ
犯人が占拠している
この軍事工場は彼の会社のものだ
レジェンド男:
それより犯人からの要求は?
ツォン:
さっき届いた
1つめは活動資金の確保
レジェンド男:
金をくれ、と
ツォン:
2つめは
コレル・プリズンに
囚われている政治犯の解放
レジェンド男:
仲間を返せ、と
ツォン:
神羅が要求に応じない場合は
軍事工場の機密を持ち出して
世界中にバラまく
と言っている
レジェンド男:
・・・ったく
反乱者ってやつは
どいつも、こいつも強欲だな
ツォン:
経験があるのか?
レジェンド男:
さあな
敵の数は?
ツォン:
およそ、40
レジェンド男:
そいつは怖いねぇ
ツォン:
どこから攻める?
レジェンド男:
正面から行く
ツォン:
本気か!?
レジェンド男:
手は打った
ツォン:
(こんな短い間に?)
私は
そこから遠くない場所で待機している
問題が発生したら駆けつけよう
レジェンド男:
なぁ、ツォンさんよ
1つ賭けをしないか?
何分で任務を終わらせられるか?
俺は10分に賭ける
お前は?
ツォン:
賭け事はしない主義だ
レジェンド男:
ノリが悪りぃな
お前、モテないだろ?
ツォン:
その質問に答える必要はない
ところで・・・
そんなに早く任務を終わらせられるのか?
レジェンド男:
もちろん
ツォン:
そうか
賭け事はしないが
プロとしての仕事を見せてほしい
10分以内に任務が終わると信じている
以上だ
レジェンド男:
・・・チッ!
リズムが狂うぜ
傭兵:
タークス!!
レジェンド男:
(最初のアイサツといくか・・・)
レジェンド男:
≪ カチッ ≫
傭兵:
向こうに煙が!
傭兵:
敵か!?
傭兵:
油断するな!
レジェンド男:
爆音を追えば
傭兵:
ウワーッ!!
レジェンド男:
そこも地獄だ
ツォン:
私だ
レジェンド男:
ああ
ツォン:
成功したな
次は、どうする?
レジェンド男:
人質は何階だ?
ツォン:
おそらく2階だ
レジェンド男:
ここを支えている柱は5箇所・・・
そうだったな?
ツォン:
間違いない
レジェンド男:
よし
柱に爆弾を仕掛けていく
ツォン:
!?
5箇所もあるぞ?
それに敵もいる
間に合うのか?
レジェンド男:
間に合わせるのさ
じゃあな
傭兵:
お前は・・・!!
レジェンド男:
俺を知っているのか?
傭兵:
[μ]-εγλ1995年の紛争は
お前のせいで・・・!
レジェンド男:
誤るのは失礼だな
お前にも、仲間にも
その代わり・・・
本気でいくぜ
レジェンド男:
(ここにコイツを仕掛けるか)
レジェンド男:
よし、次だ
傭兵:
!!
神羅の犬とは落ちぶれたな
レジェンド男:
俺は何も変わっていない
違う戦場を生きているだけだ
傭兵:
!?
本気か?
あんたがタークス?
レジェンド男:
やれやれ
古い顔によく会う日だ
レジェンド男:
(ここにコイツを仕掛けるか)
ツォン:
私だ
レジェンド男:
・・・・・・
ツォン:
爆弾の設置が終わったようだな
レジェンド男:
・・・・・・
ハァ
そろそろ女の子に
代わってくれないか?
ツォン:
私で我慢してくれ
レジェンド男:
今日はツイてねぇな
(渋い男ばっかりじゃねぇか・・・)
ツォン:
次はどうする?
レジェンド男:
ここからは一気に攻める
ツォン:
いいか
被害は最小限に・・・!
レジェンド男:
あわてんなよ
せっかちも女にモテないぜ?
ツォン:
幸運を祈る
レジェンド男:
(切りやがった)
・・・カタブツめ
レジェンド男:
よし
一気にクライマックスだ
傭兵:
いたぞ!
傭兵:
捕まえろ!
傭兵:
ウッ!
傭兵:
コッチだ!
傭兵:
爆弾を持ってる!
傭兵:
ワーッ
傭兵:
奥へ移動してる!
傭兵:
止めろ!
傭兵:
ウワーッ!!
レジェンド男:
これでも食らって
大人しくしとけ!
レック:
!?
レック:
敵襲か?
レジェンド男:
おっさん!
助けに来たぞ
・・・・・・
ライナー:
ング・・・グ・・・グッ!
レジェンド男:
(さるぐつわも手足の拘束も)
(素人の仕事じゃねぇな・・・)
・・・おっさん
しばらく我慢してくれ
レック:
あの独特の爆発音
やっぱりあんただったのか・・・
レジェンド男:
久しぶりだな
レック:
・・・・・・
戦場では死神と恐れられた男が・・・
なぜ神羅にいるんだ!?
レジェンド男:
神羅に従っているわけじゃねぇ
力を貸しているだけだ
レック:
今回ばっかりは
さすがのあんたも逃げられないぞ
レジェンド男:
「逃げる」だと?
女を泣かせるな
勝負を投げ出すな
この2つが俺の信条でね
レック:
初耳だ
レジェンド男:
お前たちこそ
逃げなくていいのか?
レック:
昔の俺とは違う
レジェンド男:
そいつは残念
レジェンド男:
≪ カチッ ≫
傭兵:
!!
レック:
!!
レジェンド男:
さてと・・・
これで1階の傭兵は全滅
2階のザコも片づいたぜ
[μ]-εγλ1995年の作戦以来だな
レック:
嬉しいことに
腕は落ちていないらしい
レジェンド男:
当然、だろ?
爆弾は俺のリズムだ
レック:
なんだと?
レジェンド男:
生きている証さ
戦場でしか生きられない
お前ならわかるだろ
レック:
ああ
怖いほどわかるぜ
レジェンド男:
昔のよしみだ
本気でいくぞ
レジェンド男:
そんな腕で
よく生き残れたな
レック:
・・・お、まえ・・・
そいつが誰か・・・
わからな・・いのか?
レジェンド男:
・・・誰か?
レック:
[μ]-εγλ1997年の話・・・
噂で・・・聞いたぜ
レジェンド男:
俺が参加した作戦の話を・・・?
レック:
真相・・・は・・・
俺・・・も・・・しらな・・かった・・・がな・・・
かんが・・・える時間をや・・・る
永遠に・・・な
レジェンド男:
やれやれ
交渉に失敗したら
敵も味方も片付けるのかよ
相変わらず
やる事がセコいな
([μ]-εγλ1997年の事件か・・・)
(思い出すな・・・)
おっさん、帰るぞ
ライナー:
ん・・・!ぐ・・・!
レジェンド男:
今はずしてやる
ライナー:
ハァハァハァ
き、きさ・・・・ま!
いつまで待たせるんだ!
レジェンド男:
・・・・・!?
(この声・・・!)
(まさか・・・)
(コイツは・・・!)
・・・・・・
(そうか・・・)
(そういう事かよ)
(顔と名前は簡単に変えられる)
(声までは変えなかったのか)
ライナー:
モタモタするな!
早く安全な道を教えろ!
レジェンド男:
ちょっと待て
ツォン:
私だ!
ライナー氏は無事か?
急いで脱出しろ!
崩れにくい方へ案内・・・
レジェンド男:
ツォン
ヴェルドのおっさんに
[μ]-εγλ1997年のカタをつける
と伝えてくれ
じゃあな
ツォン:
おい!
ライナー:
い、今のは
救援の電話じゃないのか!?
か、勝手に切りやがって!
レジェンド男:
・・・・・
なあ、おっさん
ライナー:
なんだ!?
話をしてるヒマなどないだろ!
レジェンド男:
・・・・・・
[μ]-εγλ1997年を覚えているか?
ライナー:
?
レジェンド男:
[μ]-εγλ1997年の事件だ
ライナー:
何の話だ?
お前は
まいにち自分の手足を
どう動かしたのか
覚えているのか!?
金にならん話は覚えとらん!
レジェンド男:
・・・・・
そうか
ライナー:
ヒィッ!!
ま、また崩れたぞ!
早くしろ!!
レジェンド男:
おっさん
1つ賭けをしないか?
おっさんが、ここから無事に出れたら・・・
無くした記憶を埋めてやろう
ライナー:
賭けだと!?
おまえ正気か!?
レジェンド男:
自分の命ぐらい自分で守ってみろよ
あの時の俺たちがそうしたようにな
ライナー:
キサマッ!
タークスのくせに
任務を放棄するのか!?
レジェンド男:
タークスなんて知らねぇよ
俺は、俺だ
ライナー:
待て!!
あの野郎・・・!
ヴェルド:
入れ
ツォン:
主任!!
彼の処分はどうなりましたか!?
ヴェルド:
先ほど報告があった
コスタ・デル・ソルでの長期謹慎が命ぜられた
ツォン:
(バカな!)
(タークスとして任務を放棄し)
(その上神羅の要人を見殺しにしたのに)
(南国で謹慎だと?)
ヴェルド:
上が恐れていたのは
神羅の機密がライナー氏や工場から
外部へもれることだ
その全てが消えた今
神羅の安全は確保された
ツォン:
・・・・・・
つまり、それらよりも
彼を失う損害の方が大きいと・・・
そういう判断ですね?
ヴェルド:
そうだ
ツォン:
(そして)
(名ばかりの処分が下されたというわけか・・・)
ツォン:
(しかし・・・)
(わからない事がある)
ヴェルド:
何か言いたげだな
ツォン:
一緒に仕事をしてわかりました
彼の工作能力は超一流です
あれほどの力をもってすれば
任務は間違いなく成功できたはずです
その彼がなぜ任務を放棄したのか・・・
私にはわからないのです
ヴェルド:
・・・・・・
彼が、最後の電話で言っていた
[μ]-εγλ1997年の事件のことは?
ツォン:
は、はい・・・
確か・・・
反神羅組織が魔晄炉を占拠し神羅を脅迫した・・・
あの事件ですね?
ヴェルド:
そうだ
その反神羅組織へ武器を提供していたのがライナー氏だ
ツォン:
!?
(ライナー氏が?知らなかった・・・)
神羅と付き合う前は
反神羅組織と取引していたのですね
ヴェルド:
そのようだ
[μ]-εγλ1997年までは
反神羅組織と
親密な関係にあったらしい
結末は知っているな?
ツォン:
はい
反神羅組織の作戦は、失敗
関係者で生存したのは・・・
2名でしたね
ヴェルド:
そうだ
そのうち1人はライナー氏だろう
ツォン:
!?
もう1人の生存者は
まさか・・・?
ヴェルド:
そう
【戦場の死神】だ
ツォン:
・・・・・・
(事件後ライナー氏は過去を消し去り)
(神羅と取引を始めた・・・)
(そうか・・・)
ヴェルド:
あの日
俺は現場にいた
事件直後
安全を確かめるため魔晄炉へ向かった
そこに彼がいた
【戦場の死神】と
恐れられた男だ
俺は身構えた
だが・・・
彼は武器を捨てある物を持っていた
ツォン:
ある物・・・?
ヴェルド:
ああ
彼は左手に赤い靴を1足だけ持っていた
そのとき、彼が静かに口を開いた
『あいつには・・・家族がいない』
『あいつのために泣いてくれる家族がいないんだ』
『今日ぐらいは』
『あいつの死を哀しんでやってくれ・・・』
ツォン:
・・・・・・
ヴェルド:
彼は多くを語らない
ここからは俺の想像だ
ライナー氏の裏切りによって仲間が死んだ
仲が良かった孤児の少女も犠牲になった
彼だけはその強さゆえに
ただひとり生き延びてしまった
ツォン:
・・・・・・
ヴェルド:
ツォン
今回の任務・・・
お前が彼だったらどうした?
ツォン:
・・・・・・
私だったら・・・
任務を放棄した
レジェンド男は
コスタ・デル・ソルで
謹慎となった
ヴェルドは
彼を呼び戻すタイミングを
うかがっていた―
レジェンド男:
ツォン
お前なら・・・
お前ならどうしたんだ?
ツォン:
わからない
わからないが
しかし・・・
裏切られて殺された仲間
死ななくても良かった少女が・・・
私にとって大切な人だったのなら・・・
私も同じ事をしたかもしれない
レジェンド男:
らしくねぇな
ツォン:
タークスへ戻ってこないか?
あなたが必要なんだ
レジェンド男:
・ ・・・・・
ライナーと組んでいた神羅に対して
特別な感情を持ってはいない
そんな世界に一喜一憂するほど若くねぇしな
ただな・・・
覚悟が定まらねぇんだよ
ツォン:
覚悟?
レジェンド男:
おっさんに言えばわかるさ
ツォン:
わかった
伝えよう
レジェンド男:
本音を言うとな
まだ
遊び足りねぇからだ
タークスなんて面倒くさいとこ帰る気にならん
そして何より・・・
明日もデートでね
ツォン:
(・・・本音は違うんだろ?)
あなたの意志はわかった
ただ・・・
これだけは忘れないでくれ
主任はあなたの帰りを待っている
私はまた一緒に戦いたいと思っている
以上だ
[υ]-εγλ 0002/2/1
ヴェルド:
俺だ
レジェンド男:
おっさん!
久しぶりだな
ヴェルド:
ああ
レジェンド男:
どうした?
元気ねぇな
ヴェルド:
タークスの指揮権を失った
レジェンド男:
ハハッ!
そりゃ
おもしろくなってきたじゃねぇか
ヴェルド:
お前に頼みがある
レジェンド男:
おっさん
この回線は神羅に傍受されて
いないだろうな?
ヴェルド:
もちろんだ
この通信は暗号化されている
安心しろ
レジェンド男:
よし
話してくれ
ヴェルド:
タークスへ復帰してくれないか?
レジェンド男:
・ ・・・・・
俺はあの魔晄炉の前で
おっさんに言ったよな
何も生み出さない戦いをするのは
もうゴメンだ、と
ヴェルド:
そうだったな
神羅は長引く大戦を
終結させようとしていた
だから俺はお前をタークスへ誘ったのだ
レジェンド男:
戦争は終わった
俺にはもう戻る理由がない
ヴェルド:
戦争はまだ終わっていない
レジェンド男:
ん?
ヴェルド:
アバランチという
半神羅組織が本格的に動きだした
奴らは今もジュノンで破壊活動中だ
レジェンド男:
そいつは事件だな
ヴェルド:
時代はふたたび動き出した
タークスにも神羅にも
お前の力が必要だ
レジェンド男:
・ ・・・・・
(おっさん・・・)
そこまで言われちゃカッコつかねぇな
わかった
ヴェルド:
頼んだぞ
レジェンド男:
状況は?
ヴェルド:
ハイデッカーの指揮で
現場が混乱している
ジュノン市民の安全確保も危うい
レジェンド男:
指揮権は?
ヴェルド:
俺の命を懸けてでも奪い返すつもりだ
レジェンド男:
よし
後は俺に任せろ
アバランチ兵:
タークス!!
レジェンド男:
よぉ、坊やたち
急いでいるところ悪いんだが・・・
ここから先へは通さないぜ
かわいい後輩たちが困っているらしいんでな
アバランチ兵:
!?
コイツ、どこかで・・・
アバランチ兵:
タイムロスは命取りだ
やれ!!
レジェンド男:
まだやんのか
アバランチ兵:
コイツ・・・!
(もしや、あの男か?)
(なぜタークスに!?)
かかれ!
レジェンド男:
ったく・・・
リズムが狂うぜ
レジェンド男:
やれやれ
おっさんの指揮権が戻るまで
あと50人くらい片付けるか
エルフェ:
!?
(あの男はタークス・・・?)
ひるむな、進め!
レノ:
ん?
(敵の様子がおかしいぞ、と)
ルード:
(・・・敵の数が減ってきたか?)
ツォン:
(何かあったのか?)
(敵の統制がとれなくなってきている)
(主任は必ず戻る・・・)
(それまで私たちがジュノンを守らなければ)
レジェンド男
と
タークスたちは
ヴェルドの復帰を信じて
戦い続けた
その思いに応えるべく
タークスの
指揮権を取り戻した
ヴェルドは
ジュノンの混乱を
おさめることに
成功した
ヴェルド:
危険な任務をよく乗り切った
これからもよろしく頼む
ツォン:
はっ
ヴェルド:
もうひとつ話がある
お前たちに紹介したい男がいるんだ
入れ
ツォン:
!!
ヴェルド:
紹介しよう
ジュノン港でお前たちが苦戦していたとき
動けなかった私の代わりに戦ってもらった
ツォン:
(やはり・・・)
(途中から一気に敵の数が減ったのは)
(この人の働きだったのか)
レジェンド男:
おっさん
無事で何よりだ
ヴェルド:
まだ死ぬ時ではなかったようだ
レジェンド男:
ツォン、お前は・・・
簡単にくたばるような
性格じゃねぇよな?
ツォン:
・ ・・・・・
ほめ言葉と受け取っておく
ヴェルド:
ツォンには
タークスのリーダーを任せている
これから任務の指示を
受けることもあるだろう
レジェンド男:
ほう
出世したんだな
ま、
俺は新人ってワケだ
よろしく頼むぜ
ツォン:
(・・・新人!?)
(間違ってはいないがずいぶんクセのある新人だな・・・)
みんな
この人のことは知っているだろう?
謹慎していたレジェンド
と、言ったほうがわかりやすいだろうか
レノ:
(あれが噂のレジェンド・・・)
(ホントに恐そうだな・・・)
ルード:
(任務を放棄しても処分されなかった)
(伝説の人だ)
(怒ると手がつけられないぞ)
(レノ・・・お前は特に用心しろよ)
ツォン:
彼の腕は私が保証する
タークス以前は死神と呼ばれて
恐れられていた男だ
レノ:
(よ…、用心するぞ、と)
ルード:
(しかし・・・)
(たいへんな人が帰ってきたな・・・)
ヴェルド:
覚悟は定まったのか?
レジェンド男:
俺に聞いてんのか
おっさんに命を預けると決めた
俺は…、タークスだ
【戦場の死神】
と恐れられ
【 レジェンド・タークス】
と呼ばれた男が
今、ここに復帰した
彼の過去を知る者は
その報に驚き
恐れたが―
彼が自らの過去を
振り返ることは
もう二度となかった
すべては
永遠に
戦場の闇に眠る